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最近、朝のニュース番組、昼のワイドショー、夜の報道番組などで生放送の画面が変わりました。えっ、気づいていませんか? 出演者同士の間隔が以前よりも広がっているのです。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、「もし自分が無症状感染者だったら」と考え、周囲の人たちに感染させず、お互いを守るために、「社会的距離1.8メートルをとりましょう」という取り組みです。

アメリカ疾病対策センター(CDC)は、この社会的距離(ソーシャル・ディスタンシング)を「集団での集まりを避け、できるだけ人との距離(6フィート・およそ1.8メートル)を保つ」と定義しています。世界自然保護基金(WWF)はパンダ一頭分、キングペンギン二匹分と表現しています。海外のスーパーマーケットなどの行列を紹介した映像を見ると、人々が一定の距離を保って並んでいます。これが、感染予防のための社会的距離、ソーシャルディスタンシングなのです。

「3密回避」を訴える密集したテレビ現場

ワイドショーや報道番組は、こうした映像を紹介し、「3密(密閉・密集・密接)を避けてください」と視聴者に注意を促します。ところが、そう言っているテレビの収録現場が実は、「3密」なのです。

私もコメンテーターとして呼ばれることがありますが、スタジオは画面に映っている3倍以上の人が集まっています。スタッフもキャストも密集して仕事をしています。テレビ画面の「画(え)」の都合上、コメンテーターなどの座る位置は、それぞれのひじが触れるほど近く、生放送でも1〜2時間と長時間に及びます。大きな声で話せば近距離で飛沫をまき散らしているわけですから、これではたまりません。

テレビの影響は大きく、テレビに映される「日常」が変わることで、視聴者の行動も変わります。私は3月28日にそんなツイートをして、「自分は大丈夫」と思っているメディア側の「正常性バイアス」について疑問を投げかけ、問題提起をしました。

白河桃子 #最新刊「ハラスメントの境界線」 (@shirakawatouko) 2020年3月28日

アメリカでは、スタジオの出演者が1.8メートルの間隔を空け、スポーツや天気などを伝えるキャスターは自宅からの出演する番組もあります。「テレビが3密の空間になっていては説得力がない」と、複数のメディア関係者にメールをしました。ちょうど、テレビ業界でも議論が始まっていたのです。TBSの元アナウンサーでタレントの小島慶子さんは「出演者も怖い」という実感のこもった賛同を示しました。

社会的距離を取り始めたテレビ

ソーシャルディスタンシングの意識が特に早かった番組は「NHK WORLD」でした。ゲストで出演した経済協力開発機構(OECD)東京センター所長の村上由美子さんは、その日の夜の出演時に「距離をとりましょう」と提案しました。テレビ画面に映る3人の出演者の間には、「手を伸ばしても触れない距離」がありました。

こうなると日本の「横並び意識」は早いのです。翌29日夕の「真相報道 バンキシャ!」(日本テレビ系)が出演者の間で距離を取るようになり、月曜朝のワイドショーから続々と同様の取り組みが見られました。「news23」(TBS系)では、妊娠中のメインキャスターの小川彩佳さんが、別室からの出演でリスクを減らしています。画面は分割の2画面になっていますが、すぐに慣れるでしょう。

フランスの友人からテレビの画面を見せてもらったとき、私は「日本のワイドショー、おかしくないか」と気づきました。海外のニュース番組では、最小限の人数で放送をしています。専門家などは自宅からのリモートワークでコメントをしています。アメリカで人気のニュースショーも、司会者の自宅から。手書きのフリップに、オープニングは司会者の子供たちの楽器演奏も入るという番組が放送されました。

「普段通りではない」ことを伝える

こうした取り組みは、テレビが画面から伝えたいことを伝える有効な手段です。「手を伸ばして人に触れない」距離を取ること、家にいること、3密を回避すること、そして、医療崩壊を阻止すること……。今がまさに重大な局面にあるということを、テレビに映っている「変化」で伝えることができます。キャスターや専門家がいくら深刻な顔で議論をしても、画面が普段通りの日常のままでは伝わりません。だからこそ今、テレビも変わることが大事なのです。

志村けんさんが亡くなり、各局で追悼番組が放送されていました。ザ・ドリフターズのメンバーや、ゆかりの人たちが出演していました。大勢の記者が志村さんの遺族を取り囲んでコメントを求める場面もありました。新型コロナの感染リスクがあるにもかかわらず、こうした行為はいかがなものかと疑問を感じました。

3密の回避、1.8メートルの社会的距離を保つ、不要不急の外出をしない、可能ならテレワークをする、できる限り家にいる……。そして、ギリギリの現場で頑張っている医療関係者、変わらずに出勤を続け、インフラや物流などを滞りなく回している人たちに感謝したいと思います。

「家族で終末期の意思確認を」

1か月後の日本のために、行動を変えるときです。ニューヨークは東京と人口も広さもあまり変わりません。ニューヨークでは、400人台だった感染者数がわずか2週間で4万人台になりました。都の発表によると、都内の感染者数は、3月30日時点で443人でした。2週間後にはどうなっているでしょうか?

東京大学医科学研究所教授の武藤香織さんは、専門家会議の中で、「家族で終末期の意思確認を」という踏み込んだ発言をしていました。イタリア、スペインなどで起きている「命の選別」の覚悟を、日本でも遠くない将来にしなければならなくなるかもしれません。そう思わせるほどにまで、日本の医療現場は切迫しているということです。私たちの将来は、リーダーの決断と、一人一人の行動にかかっています。