ほかの人の前で、自分の配偶者をなんと呼ぶか。「夫を『旦那さん』と呼んではダメですか?」というトピもあり、多くのコメントがついていた。私の答えは、「公式な場では『夫』と『妻』。でも、会話の中では人それぞれでいいんじゃない?」。

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 たとえば政治家の発言を見ても、国会の答弁で配偶者に言及するときは「夫」「妻」。ところがブログなどでは、「ウチの主人」「私の奥さん」「つれあい」などと人それぞれの表現を使っている。

 もちろん、正しい日本語という観点からは「身内に“さん”づけはどうか」「夫婦は主従関係ではないのだから、“主人”は好ましくない」などとツッコミたくなるところだが、一方でいつも堅い政治家の素顔が垣間見えてほほ笑ましい、という気もする。

 芸能人などでは「ママちゃん」「旦那クン」などさらにくだけた表記で書いたり語ったりしているケースもあるが、これなどは愛称と考えればよいだろう。

 ただ、いまのところは親しい人が少ない場面や職場では、やはり「夫」「妻」がよいと思う。それ以外の呼び方を使うと、「社会人としての言葉の使い方を知らないのかな」と思われてしまうおそれがあるからだ。

 もちろん言葉は生きもので、時代によっても使い方のルールは大きく変わってくる。最近は家族であってもお互いをリスペクトするのが常識となりつつあり、スポーツ選手が「お母さんに感謝してます。家族最高!」などと言ってもだれも目くじらは立てない。

 そのうち「私のステキな旦那さん」「ウチの最高の奥さん」と職場などで言うのもオーケーとなるかもしれない。それはそれで悪くないじゃない、と私は思っている。

香山リカ(かやま・りか) 精神科医、立教大教授。1960年、北海道生まれ。豊富な臨床経験を生かし、新聞やラジオ、テレビなど様々なメディアで、現代人の心の問題について発言している。