若い頃、「人間機械」になったことがある。「晴れ」「のち」「関東地方」など気象関連の単語を淡々と読み上げ録音した。予報をもとにコンピューターがその声を組み合わせ、日本テレビ関連のニュース専門のCSチャンネルで毎日流されていた。私は「自動天気」と呼んでいた。人間の声だけど、機械的。新しい試みとして珍しがられた。

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 「AIに代替されにくい文系の仕事は?」というトピックがあった。実は、私たちアナウンサーの仕事は既に代替が始まっている。昨年10月から、「自動天気」と同じチャンネルで、AIがナレーションの一部を担当しているのだ。

 その名も「声の職人」。番組初日、アナウンス部では多くの部員が街頭テレビよろしく画面を注視した。ある生物についての3分程度のVTRだったが、イントネーションの変な硬さと、間(ま)に若干の違和感はあるものの、機械っぽさの少なさに衝撃を受けた。

 なんでも、この「声の職人」は、外国語の原稿を読み取らせれば、その言語でナレーションする能力もあるのだという。噛(か)まない、時間切れを起こさない、そして、スキャンダルも(!)無い。

 「人間機械」だった私は、現代の「機械人間」のレベルに愕然(がくぜん)とする。これからは、すみ分けの時代になっていくのかもしれない。ニュースやスタジオトークは人間アナウンサー。経済や交通情報はAIアナウンサー、とか。

 だとしたら、人間じゃなくちゃ、と思っていただける分野は守りたい。温もりと深みのあるナレーション、機知にとんだ会話、そして実況。AIに負けたくない、うまくなりたい!

 自己研鑽(けんさん)あるのみだけど、負けない方法をAIに尋ねてみたい気もする。

杉上佐智枝(すぎうえ・さちえ) 日本テレビアナウンサー。1978年、東京都生まれ。「キユーピー3分クッキング」の土曜日の回などを担当。2児の母で、絵本の読み聞かせなどに関する資格を勉強中。